2026-09-24

人材強化が経営課題の1位90.2%|採用の前に、渡せる形にする順番

帝国データバンクが3月4日に、企業の経営課題を聞いた調査を出しました。 経営層とマネジャー、5,241人の回答です。

1位は人材強化でした。90.2%。 採用と、定着と、育成をまとめた項目です。 規模別に見ると、中小企業で94.0%、小規模企業で77.6%。 小さい会社ほど数字は下がりますが、それでも8割近くが挙げています。

この順位に驚く人は少ないと思います。 募集をかけても来ない。 入っても続かない。 続いた人に仕事が集まって、その人が抜けた月に全部が止まる。

ただ、同じ調査の4位に、別の項目が入っています。 業務の標準化、58.3%です。

1位と4位のあいだには、はっきりした違いがあります。 人材強化には、相手が要ります。 採用も、定着も、育成も、こちらの都合だけでは進みません。 業務の標準化には、相手が要りません。 今日、机の上で始められます。

ここから先は、統計ではなく、ある会社が通った順番の話になります。

訪問看護と自費のリハビリをやっている経営者がいます。 数年前まで、事業のほぼ全部を一人で回していました。

月初にレセプトをまとめて、5、6時間。 利用者30件分の計画書を作って、1件あたり15分。 月の半ばに報告書を30件作って、FAXで送る。 計画書と報告書を合わせて、毎月60件分の手が動きます。 これとは別に、動画をiPhoneで撮って、ノートパソコンで編集して、予約投稿する。 ブログを毎週書く。SNSに流す。営業にも出る。

この状態で、人を増やそうとしました。 そこで先に決めたのが、技術者は雇わない、ということでした。

理由は本人の言葉が分かりやすいです。

コードを打てる人間ではないので、コードを打たなくてもできるシステム化から進める。

システムを作れる人を採れば解決する、という道は選びませんでした。 採れたとしても、その人が作ったものは、その人しか直せません。 一人に集中していた状態が、別の一人に移るだけになります。 しかも移った先は、自分が中身を見られない場所です。

代わりにやったのは、抱えている仕事を全部、紙に書き出すことでした。 月初のレセプト。計画書。報告書。動画。ブログ。SNS。営業。 書き出してから、二つに分けます。 自分が判断しなければいけないものと、手順が決まっているものです。

ブログのアップロードは、後者でした。 当時、1回5,500円を払って外に頼んでいた作業です。 手順が決まっていて、判断がない。 だから、その5,500円が、そのまま「この作業の値段」として見えていました。

自分の作業には値札が付いていません。 外に出した瞬間に、はじめて金額が見えます。 見えた金額のほうが安ければ、それは渡してよかった作業だったということになります。

見えているところから順に渡していきます。 そのとき、渡す先はいくつも作りませんでした。 窓口を一つにして、そこから各所へ振り分ける形にしています。

この形にも理由があります。 渡す先を増やすと、渡す側の仕事が増えるからです。 5人に配れば、5回説明することになります。 説明が5回になると、配るより自分でやったほうが速い、という結論に戻ります。 一人で回してきた社長が組織化でつまずくのは、たいていここです。 人は増えたのに、自分の手が空かない。

人材強化が経営課題の1位ということは、裏を返せば、人が入れば解決すると考えている会社が9割あるということでもあります。 実際には、入った人に渡せるかどうかが、その手前にあります。

渡せる形とは、手順が文字になっていて、判断がいらない状態のことです。 頭の中にある仕事は、人が来ても渡りません。 毎回、頭の中を口で説明することになります。 説明できる日もあれば、忙しくてできない日もあります。 できない日が続くと、新しく入った人の手が空きます。 手が空いた人から、辞めていきます。

業務の標準化58.3%と、人材強化90.2%は、別々の課題ではないのだと思います。 順番があるだけです。

採用を止める話でもありません。 募集は出したままでいい。 そのあいだに、いま自分が抱えている仕事を1枚に書き出して、判断のいらないものに印を付ける。 印が付いたところが、人が来たその日に渡せる部分です。 印が1つも付かないなら、いま採っても、渡すものがまだ形になっていないということになります。

私たちが会社にうかがうときも、最初にやるのはこの書き出しです。